言葉と記憶の小径。

D's Diary./The long and winding path of my own choice.

信じられる暮らし

〇日
朝、クルマのサイドミラーが凍結。
解氷剤をスプレーし、10分ほどでようやく元に戻った。
こんなのが毎日かと思うと、本気で南の国に移住したくもなる。

遅々として進まぬ仕事も2つ、3つ。
かさぶたのように脳裏からは離れず、眠れぬ夜が多くなった。

昼のラジオで求人案内を放送していた。
時給1230円、製造業。3交代制。
時給1350円、製造業、午後10時から午前7時まで…。

かなり前の話だが「がんばらない宣言」を
数千万もの広告費をかけて全国に言い放った知事がいた。


がんばりたい人って、いったい、どこにいるんだろう。
声高に叫ばれる一瞬の正論や正義よりも、
信じられるのは、静かに、当たり前に、永続的に営まれる暮らしだけ。


〇日

ユニキロで買った防寒タイツが、
今朝、履こうとしたら「ジュワッ」と音をたてて裂けてしまった。
どうせ見えないのだから、そのまま履こうと思ったが
大きく穴のあいたモモのあたりがスースーして気持ちが悪い。
やむなく捨てることにして
代わりのタイツを買いに行った。

市内に何店舗かある「むかわや」は、
百円のT シャツだって売っている、おば(あ)さん御用達の格安衣料品店


どの一角をとっても「おしゃれ」の形容が
絶対に似合わないその店の中は、広いことは広くて、明るいことは明るい。


案の定、毛糸の帽子をかぶって
隣にある八百屋さんの名の入ったポリ袋から
ネギやゴボウをにょきっと出したおば(あ)さんたちが、
赤紫色の毛糸のパンツや
妙に艶やかなピンク色のババシャツなんかを、真剣な目つきで選んでいる。

紳士用のタイツが、いくら探しても見つからないので
レジのおばさんに「タイツありますか」と尋ねてみる。

「半分の? 全部の?」
「?」
「膝までの半分のと、くるぶしまでの長いのとあるんです」
「くるぶしのください」
「えんせきだから、あったかいよ」
「?」
「え・ん・せ・き」
「赤外線ですか。遠赤外線」
「そうそう。あったかいよ」

税込み799円。どうして、798円じゃないんだろう。

 

〇日

ずっと以前に観た映画『CITY OF JOY』(1992 米)をもう一度観る。
パトリック・スウェイジ演じる主人公の青年外科医が
こんなことを話す場面があった。

人生には3つの選択しかない。
逃げること。
傍観すること。
飛び込むこと。

貧困のシンボルともいえる
インドのカルタッタが舞台の映画である。
大好きなE・モリコーネのスコアも秀逸。好きな映画だ。


朝、クルマでラジオをつけると、BEGINの「海の歌」が流れていた。

泣ける強さと 負ける優しさ。
泣かないように 負けないように みんな大人に変わってゆく。

飛び込む前に、逃げる前に、泣く前に、勝敗をつける前に、
傍観する技術だけは、身についた。こんな大人になる予定はなかった。



〇日

寒いのは苦手だ。
それでも、雪は嫌いになれない。
消えるためだけに、降り積もるうつくしさ、いさぎよさ。