言葉と記憶の小径。

D's Diary./The long and winding path of my own choice.

2024-05-01から1ヶ月間の記事一覧

あの町、この町。

すっかり空っぽになった家のなかを眺める。母とカミさんと自分の3人ぼっち。名残惜しいというのでもなく、凝視するのでもない。荷物の片付けや発送、煩雑な役所の諸手続き、近所への挨拶などで疲れてしまい、あちこちさわってサヨナラ、という力も残ってい…

絵の具の匂い。

英語を習い始めたのは小学5年生のときからだ。母はそれまで息子の教育になど、なんの関心もなかった人だったけれど、ある日、近所のおばさんに「中学に入る前に、英語くらいやっておかないと」とかなんとか勧められ「おまえ、明日から英語に行け」と相成っ…

質屋と腕時計。

質屋の常連だった。学生時代のことだ。仕送りだけでは毎月の生活が苦しく、時折、アルバイトで少し余計に稼いだとしても、お金はみんな、一人旅の道楽で消えていった。 食料を買うお金がなくなると、質屋に通う。質草といえば、入学のときに母からもらった腕…