言葉と記憶の小径。

D's Diary./The long and winding path of my own choice.

2024-03-01から1ヶ月間の記事一覧

「はる」という名のネコ。

前の前の年の秋頃から、庭先に通ってきた野良ネコがいた。週に何度か縁側で休むようになった。撫でてやると、体をすり寄せてくる。冬になっても、週に数回、やってきて、その回数は少しずつ増えていった。 雪の日は、雪を漕いでやってくる。朝、窓の外を見る…

任せる。

父が亡くなって30年以上が過ぎた。実家は北海道の小さな町。母にはずっと一人暮らしをさせてきた。申しわけないと思いつつ、年に一、二度しか帰省してこなかった。帰るたび、母子二人で行う作業があった。作業といっても、小さな金庫を開け、通帳や生命保険…

かなしいことがあったら。

〇日 一時はこの仕事、ほんとうに完成できるのだろうかと考え、眠れぬ日々が続いた。しかし、不安は杞憂に終わる。昔、「杞の国」に住む男が、天が崩れたら自分の住む場所がなくなってしまう、と心配した中国の故事から生まれた言葉とされる「杞憂」。 玄関…

寄る辺なき魂の祈り。

1970年代に入る前から、水俣病は大きな問題となっていて、ベトナム戦争と同じくらい、連日ニュースで取り上げられていた。四日市、川崎、水俣イコール公害で、煙だらけといった印象しかなかった。 水俣の問題は、煙ではなく、海だった。最初に現実の一端にふ…

書くことの効用。

〇日 パソコンにメモとして記録した時期もあったが、いつの間にか手書きのメモに戻っている。3号というA5のノートに、気になった言葉を書き写す。目を病んで、新聞の小さな文字が読めなくなって、手書きのメモも滅ってきた。 書くことで(RAS/Reticular …

さじ加減。

「薪を2、3本持ってこい」と母にいわれ、物置から薪を3本持っていくと「バカモノ」と叱られた。子どもの頃の話である。「タバコを2、3箱買ってこい」と父に頼まれ、家の前にあるお店からタバコを2箱買ってきたときにも「バカモノ」と叱られる。2、3…

沖縄。

■Koza (Okinawa City) ■Kadena Town ■Shuri Castle(Naha city) ■Shurikinjo Stone Pavement(Naha city) ■Market(Naha city) ■Kudaka Island しばらく、沖縄に滞在した。仕事の合間、少し足を延ばして、那覇周辺の町や村を歩いた。本島にはモノレール以…

読んだ本の記録─── あの人の「眼差し」。

■ 三岸節子さんの絵が好きだ。彼女の書く文章も。花の絵が多い。花など育てることも愛でることもしないくせに、この人の「花」が好きだ。 花よりもいっそう花らしい、花の生命を生まなくては、花の実態をつかんで、画面に定着しなければ、花の作品は生まれま…

「最後の春休み」。

春になると聞きたくなる歌がある。山本潤子さんの歌もその一つ。ユーミンの手がけた曲が少なくないが、曲によってはユーミンよりも山本潤子さんの歌のほうが大人びて、少し艶っぽく胸に滲み込んでくる。このことは、ユーミン本人も認めている。 赤い鳥、ハイ…

Hawaii, Hilo。

ホノルルに着いた翌日、ワイキキの通りで格安航空券を扱う代理店を物色。いちばん安いチケットを手に入れ、午後、ハワイ島・ヒロに飛んだ。飛行時間はわずか数十分。地元の人は買い物かごを持って、バスで移動するみたいに、この路線を使っている。ヒロは、…

一呼吸の今。

〇日 毎日のように、ネグレクトや暴力を受ける子どもたちのニュースが聞こえてくる。仕事で、事件を起した少年や少女に関わったことがあった。多くは幼少期、両親によるネグレクトを経験しており、身体への暴力、あるいは言葉の暴力によってもたらされる過酷…

あっちゃんの入学式。

あっちゃんは一つ上のいとこである。1年生にしてはからだは大き目で、少しいかつい感じはしたが、大人みたいに穏やかな口調で話す、気持ちのやさしい子どもだった。 洋裁職人だった母は、入学のお祝いにとジャケットに半ズボンのスーツ、ワイシャツ、蝶ネク…