言葉と記憶の小径。

D's Diary./The long and winding path of my own choice.

2023-04-01から1ヶ月間の記事一覧

コッペパン。

家から中学校までは、歩いてわずか3分ほどだった。家の前の道路をちょいと左に行って、そこから右を眺めればもう正門。あまりの近さに、いつも遠回りをして通学していたほどだ。その遠回りの道筋に、A子ちゃんの家があった。幼稚園のときからの幼なじみ。で…

ヒロイン。

〇日 いつから「やさしい」のが男の人のほめ言葉になったのでしょう。だいたい「いい人」とか「やさしい人」というのは飲み屋のツケを踏み倒せない、ホステスにまで愛嬌をふるようなアホのこと。 あまり「やさしい」「やさしい」といわれると何だか「バカだ…

三勿三行、三毒。

〇日 トラブル続きだった北海道の出張から帰り、ここ数日は脇目もふらず、目の前のことに集中する。 脇目もふらず、には理由があった。このところ、過ぎ去ったこと、これからのことを考えてしまうと手が止まってしまい、途端、マイナスな想念に支配されてし…

私はその輪の中に入ってゆかない。

清廉な陰と艶を湛えた演技の素晴らしさもさることながら、常にボーダーを超えようとする行動力で培われた視座、それらが凝縮されたエッセイや小説が好きだった。 なかでも「30年の物語」(講談社 1999)は、何度も読み返しているものの、汚れるのがいやで、…

このように生きた。

〇日 夢の記録をとるようになって20年以上になる。全ての夢を記録しているわけではなく、深い記憶の底からえぐり出されたような、印象深い夢を見たときにだけ、目覚めてすぐにメモをする。 そんな夢を見たときには、現実の世界に戻ってくるのがいやで、また…

いのちの宣言=祈り。

黒澤明の映画のなかで、忘れられない作品の一つに「赤ひげ」がある。何度観ても、あの「井戸」の場面で泣かされる。 ───ある日、赤ひげの養生所に、毒を飲んだ一家心中が運び込まれる。貧しい長屋の長坊の一家だ。 幸い、長坊と母親だけは息があった。その長…

帰りたい。 帰れない。

この仕事のおかげで、旅ばかりしてきた。どこに行っても「あっ、いい景色!」と思う場所には北海道の風景を重ねている自分がいた。どんなに素敵な景色でも山に囲まれた場所はどうにも落ち着かず、知らず知らず、大きな空と広大な景色に魅せられてしまう。 倉…

「いちご白書」の時代。

Buffy Sainte-Marieの「Circle Game」を買ったのは確か中学生のときであった。映画「いちご白書」(1970年 米)の主題歌である。 学生運動の映画だったが、通しで2回観てもさっぱり訳がわからず警察に抵抗する学生ってカッコいいな…という程度にしか思えな…

腐りかけがおいしい。

賞味期限、消費期限がどうのこうのうるさい人がいる。我が家では期限切れのもなど、わんさか冷蔵庫に眠っているし最近は日付そのものが見えにくいこともあってまったく気にしない。せっかく買ったものを食べずに捨てることなど昭和の生まれはやってはいけな…

言霊もしくは第三の眼。

〇日 休日。カミさんは東京。自分はというと今日は「片づけの日」と決め、炊事・洗濯・掃除、アトリエの整理・整頓。事務所の引っ越し時、これでもかっというほどモノを捨てたつもりだったが、まだまだ、不要なものがあちこちに散在している。 それらが終わ…

虹になる言葉───詩集「光る砂漠」(矢沢宰)。

高校の図書館で初めて「光る砂漠」(童心社)を手にした。21歳で夭逝した矢沢宰の詩集である。2週間おきに借り換えをし、ほぼ3年間、自分の手元に置いた。どうして買おうとしなかったのか、思い出せない。 矢沢の作品を最初に紹介したのは、お茶の水女子大…