言葉と記憶の小径。

D's Diary./The long and winding path of my own choice.

2023-07-01から1ヶ月間の記事一覧

マザーグース「Solomon Grundy」=儚さのたとえ。

夕食を終えて庭に出ると、自宅の前の林のほうからヒグラシの大合唱が聞こえてくる。秋の訪れを連想させるが、資料を見ると、出現はむしろ早めで、6月の末頃からなのだという。昨年はこの鳴き声を聞いたかどうか、覚えていない。 子どものころ、ヒグラシの鳴…

母娘の会話。

A子さんのお母さんが入院して、間もなく3週間。すでに、口からの栄養は摂れない状態となり、身体のあちこちを「チューブでつながれている」という。日増しに、認知症の症状も強くなってきた。 A子さんは毎日病院に通う。ご主人や息子さんが時間のあるときは…

恐山。

青森県の恐山を一人で旅をしたのは、19歳の夏のこと。当時住んでいた札幌から鈍行列車を乗り継いで青函連絡船に乗り青森駅から大湊線に乗り換え、現地でバスを降りた頃には、足腰がフラフラになっていた記憶がある。目的は一つ。小学生のときに亡くなった母…

いい顔。

〇日、大学時代の先輩Aさんと一献。1か月前にお母さんを亡くされたばかり。思い出話になると、すっと涙が頬を伝った。 カウンターの隅で話を聞いていたお店の人が話しかけてきた。他に客はいない。 ちょうど同じころ、ご家族の一人を失った。 よかったらビ…

流れ星。

どこでもいい。どこか一点、じっと見ていろ。必ず、流れ星が見える。遠い昔の話だ。タバコを吸いに庭に出た父にくっついて、一緒に夜空を見上げたことがあった。傍らの父は北の方角を見上げてそう呟き、吸い込んだタバコの煙を、闇に向かってすうっと吐き出…