言葉と記憶の小径。

D's Diary./The long and winding path of my own choice.

2024-04-01から1ヶ月間の記事一覧

活字とジョバンニ。

「銀河鉄道の夜」(宮澤賢治)に出てくるジョバンニは、学校の帰り、活版印刷所で働いていた。この町で私が仕事を始めた頃にも「活版印刷」は細々とだが、まだ残っていた。 印刷会社には文撰・植字工という職人さんがいて、片手に鉛の活字が入った箱を持ち、…

犬と人。

おつきあいのある会社に雑種の大きな犬がいた。こんにちは、といって玄関を開けると、はっはっはっと息を切らして事務所の奥から、走ってくる。 からだを脛にこすりつけながら顔をあげ、目が「撫でろ」といっている。喉元をさすり、頭を撫で、おなかをポンポ…

手入れと丁寧。

■ 朝の「拭き掃除」を始めて15年ほどになる。雑巾を固くしぼって玄関の土間や仕事場の机、リビングの床などを拭く。きれい好きというわけではなく、手入れをすることで空間がきれいに見えてきて、頭の中が整理されていくのが心地よい。 拭き掃除を始めてから…

小樽。

週末、小樽を歩いた。1年ぶりのことだ。今回も、天気に恵まれた。これまで10回以上訪れているが、不思議なことに、悪天候だったことはない。 明治から大正にかけて北海道における経済・文化・商業の中心地として栄え「北のウォール街」と呼ばれた。そして、…

じゃあね。

新千歳空港からの電車を札幌で乗り換え、Aという町まではかれこれ90分。そこから、実家のあるB町まではわずか9キロだが、ここからの交通の便が極端に悪い。バス、電車ともに1時間に1本。待ち時間なしで、空港からA駅まで来ても、いつも駅で1時間ほど時間を…

子どもの言葉。

灰谷さんの本はたくさん読んで、たくさん捨てた。灰谷さんが亡くなったとき、そばに置くのがつらくなったからだ。 本を開くたびに、子どもたちの作文や詩に寄り添いながら、大人としての自分を律する姿が目に浮かぶ。 あれから何年たっただろう。いつの間に…

キヨシさんのこと。

大学時代。横浜市内のある駅の売店でバイトをしたことがあった。売店といっても構内に2本あるホームの売店にジュースやビール、牛乳などを運ぶ、いわば運び屋だ。 牛乳瓶が60本入ったケース1箱は、おそらく20キロ以上の重さがある。それらを缶ジュースや缶…

ひとりぼっちこそが。

事務所には毎日のように宅急便が出入りする。こちらから「時間指定」で送ることは滅多にないが、留守のときには、再配の連絡をすることになる。 1つの小さな荷物のために同じ道を往復する。ほんとうに気の毒だ。当たり前だが、それが「当たり前」となってい…

「黒」と「玄」。

デジタルカメラが主流になる以前、写真の現像といえばプリント、ポジともにラボに預けるよりほかはなく、手焼きで仕上げるのはちょっとオタクな人か裕福な部類に入る人たちだけだった。 白黒フィルムだけでもフジのネオパン、コダックのトライX、イルフォー…