言葉と記憶の小径。

D's Diary./The long and winding path of my own choice.

「ニュー・シネマ・パラダイス」=自分のすることを愛せ。

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本や映画の好みは、

その人がそのとき、

置かれていた環境や思いに

大きく左右されるだけに、

安易に人に

薦めることは避けてきました。

それでも、何百と観た映画の中で

自分の中の

ベスト1を挙げるとすれば、

迷うことなく、

この映画を挙げます。

 

 

映画好きの少年と

映写技師のアルフレードの、

年の差を超えた友情の物語。

 

忘れられない台詞が、

たくさんありました。

 

青年になって

兵役から戻ってきたトトに

アルフレードが語りかける場面。

 

「ローマに戻れ! 

おまえとは話さない。

おまえのうわさを聞きたい」

 

アルフレード

トトの成長、出世を願っています。

そのためには、

故郷も友情も家族も

捨てるほどの覚悟が

必要なのだと説くのでした。

 

 

こんな場面もありました。

駅。

村を出て都会に向かうトトに

火事で失明したアルフレード

トトの頬を両手で包み込み

強い口調でこう語りかけます。

 

「自分のすることを愛せ」

  

子どもの頃、映写室を愛したように

好きなことは、

生涯、守り通せというのです。

 

トトはこの言葉を守り

アルフレードが亡くなるまで

決して故郷の土を踏むことは

ありませんでした。

 

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By Pixtabay.

 

 

時が過ぎ、

トトのもとに

アルフレードが亡くなったという

知らせが届きます。

 

30年ぶりに故郷に戻り

葬儀で再会した母親。

トトに語りかける場面も

印象に残っています。

 

「誠実な人はいつも孤独なものなのよ」

 

トトは映画監督として

すでに大成功を遂げていました。

しかし、母親は、

都会に住む彼に

電話をするたび、

受話器の向こう側に感じる

違う女性の気配に

気付いていたのです。

その女性たちとわが子との間に

愛がないことにも。

 

 

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この映画を観るたびに

自分はこんなにも

人を愛し

人の幸福を願うことができただろうか、

大切な人の

成長を支え続けることができただろうかと

考えてしまいます。

 

自分の力しか信じられず

大きくなることばかり

考えていたころの自分は

ただの動物だったのかもしれません。

 

 

トトが街を出てから

散歩にさえ

出掛けようとしなくなったアルフレード

トトとの再会は、

自らの旅立ちの日となりました。

 

アルフレードの葬儀で

すっかり老いた

アルフレードの妻アンナが

トトに語り掛けます。

 

「死ぬ間際、

あんたの母さんに

あんたには

知らせるなと言ったのよ」

 

30年もの間、

会うことはなくとも

トトやアルフレードの人生は

どんなにか

幸福だったことか。

 

人と人とが

深いところでつながることに

距離や時間など

意味をなさないことにも

気付かされます。

 

心から

与えようと思った人だけが、

与えられる。

映画を観終えるたび、

このことが自身の心に

刻み込まれます。

 

そしてまた、

今日もすべての人が

幸せに暮らせますように。

大切なあの人が

彼の地で安らかに

生きていますようにと

いつもより少し

やさしい気持ちになった

自分を感じることができるのです。

 

 

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※「ニュー・シネマ・パラダイス

公開年:1988年

製作国:イタリア、フランス

監督:ジュゼッペ・トルナトーレ

音楽: エンニオモリコーネ

出演:フィリップ・ノワレ

   ジャック・ペラン

   サルヴァトーレ・カシオ