言葉と記憶の小径。

D's Diary./The long and winding path of my own choice.

横断歩道で拍手

信号が赤に変わって、横断歩道の前でクルマが止まった。
片側に、少し腰の曲がったおばあさんが、傘を杖代わりにして立っている。
反対側に、ランドセルを背負った、小柄な小学生の男の子2人。

歩行者が渡る番になって、おばあさんがヨロヨロと歩きはじめた。
2人の小学生が小走りでおばあさんに駆け寄り
片方ずつおばあさんの手をとって支え、元の方向に戻ろうとしている。


信号で止まっている両側の車に、ペコリペコリと頭を下げている。
3人は無事、横断歩道を渡りきった。

対向車線に止まっていた軽トラから、
頭に手ぬぐいを巻いた作業員らしい若者が、ドアを開けて飛び出してきた。


若者は1人、横断歩道の真ん中に突っ立った。
そして3人の後ろ姿に向かって、パチパチパチッと拍手を始めた。後続のクルマ、対向車線のドライバーたちも、窓を開けて一斉に拍手。

何年か前の、昼休み。
ラジオをつけたら、歌手の布施明さんが、
「今日、ここに来るときね、素敵なことがあったんです」といって、
こんな話を披露していた。東京での出来事といっていた。