〇日
1400。A子さんと市内のカフェでお会いする。
「見せたかったのです」
最初に差し出されたのは家族写真。
写真館で毎年、撮っているという。
アルバムに入った大判の写真だった。
もう一つは手紙。
恩師からもらったものだそう。
丁寧なペン字で便箋何枚にも、かつての教え子である
A子さんの思い出、長所、
これからに期待することなどが綴られている。
手間をかけた写真、手紙。
その人のためだけにと、費やされた時間と思いの深さ。
人に美しい何かを届けるということは
じっくりと時間をかけ、
誠実かつ順当な道を経なければならないようだ。
――何か新しいことを始めると最初は濁っている。
だがやがてそれは清流になり
自然な運動のなかで静かに営まれていく(フジコ・ヘミング)。
〇日
午後の新幹線でB市。
地元ビルダー若手スタッフとの集まり。
20代後半から30代後半まで9名。
父親と二人体制で家づくりに励むAさん。
土木から転身し、一級建築士の資格を取ったばかりのB子さん。
男社会の現場で、15年以上の経験を積んできたC子さん。
Q1住宅の普及をと励むDさん。
難病のギラン・バレー症候群の息子さんを抱えながら
福祉の道を学んできたE子さん。
三回目の挑戦で一級建築士の資格を取得し
高性能住宅から断熱改修まで、
いい家をつくりたいと話すFさん――など
自分たちの世代以上に、
第一線で活躍されている方々ばかり。
自己への誠実と社会への誠実。
その間で苦しみつつも前を向いて歩む人は必ず、
きれいな種を蒔く。
森羅万象に、多情多恨たれ。