経済学の博士号を持つ学者であり、
報道写真家でもある。
ユージン・スミスの写真が事実の裏側を捉え、
真実の種を開花させようとする写真であるなら
この人の写真は、どんな悲惨な状況も
絵画のような美しさで切り取り、
そこに「光」を散りばめた、アートのように見えてくる。
見る者はそこから
直接的なメッセージを受け取るのではない。
原初的な感覚を自らの内奥で覚醒され
それを言語化できない
苛立ちと不安を抱えながらも、
徐々に、確固たる力が漲ってくるのを実感させられる。
端的にいえば、勇気をもらえる写真なのだ。
何かをしなければならないという、
漠然とした勇気。
生きていかなければならない、
という潔さ、覚悟であるかもしれない。
サルガドの、この言葉を大切にしつつ
長い間、仕事をしてきた。
撮影の際の心構えを、繰り返し、こう述べている。
「徹底して寄り添うこと。
徹底して、その瞬間を待つこと。
そうすれば必ず『それ』はやってくる」